4.警備隊のお仕事 「サンジ、これおいしい!こんど作り方メモって!…て、あ。そういえばまだこの島に来た理由聞いてなかったっけ?」
彼、ティム・ローランは激昂していた。
無論、原因は先ほどの通話相手に対してではあるが。
しかし、己の上官に対してもいろいろ言いたいことがある。
どうして、あんないけ好かない相手の言葉を鵜呑みにして承諾してしまうのか。
そして、彼の言う『八年前の出来事』とは何なのか。
声を荒げて問うた彼に、上司は黙って資料庫の鍵を渡したのだが。
「ここから、資料を見つけろと……?」
ふつふつと沸いてくる怒りに、拳を振るわせる。
ポンポンと自分の肩を叩いた上司の言葉を思い出す。
『ついでに、ちょっと頭を冷やしておいで』
乱暴に積み上げられた書類の山を前に、頭を冷やすどころかまた血圧が上がりそうだと、彼は思った。
* * * *
テーブルに並んだ料理は豪勢で、とてもおいしそうである。
目の前のオムレツは実際とても美味で、しかし残念なことに今のにはそれをゆっくりと堪能する余裕は無かった。
「へ? いや、ちょっとよく聞こえなかったんだけど……もう一回言ってくれる?」
言った自分でも、己の顔が引き攣っていることが分かっている。
分かってはいるが、聞き質さずにはいられなかった。それが聞き間違いなどではなく、幻聴でもないことも分かっていたけれど、それでも。
「ルフィ、今何のためにこの島に来たって言った?」
縋るように問えば、口一杯に頬張っていた肉の塊りを呑み込んで、いっそ清々しいほど堂々とした口ぶりで答えた。
「だから、この島の人魚姫に会いに来たんだ。仲間にしようと思って」
ぐらり。
眩暈を覚えて、はこめかみを押さえる。
「だ、大丈夫か?」
あんまり大丈夫じゃないかも、チョッパー。
心配そうに自分を見上げて来る小さなトナカイに実際に口にする余裕もなくて、心の中でげっそりと呟いた。
実際に口にしたのは別の問い。
…答えは予想がつくので、改めて聞くのも無粋な気がするが。
「ねぇ、ルフィ。その『人魚姫』の話って誰から聞いたの?」
「オーナルの爺さんから」
間髪いれずに戻った答えに、は数瞬沈黙した。
「………………そう。まあ、ね。そうだとは思ったよ」
覚えてやがれ、あの爺。
ここには居ない酔いどれ爺に殺気を送り、それからは疲れたように肩を落とした。
食事に夢中の船員のほとんどがその動作に気付かなかったが、やはりチョッパーだけは心配そうに自分を見ている。
「何でもないよ、チョッパー」
それより早く食べないと、無くなっちゃうんじゃない?
すでに空になりつつあるテーブルの上の皿を指差せば、ようやく小さなトナカイはから食事に注意を戻した。
これで考えに没頭できる、そう思ったのだが、今度は脇からコップを持った手が伸びて。
「ほら、茶だ」
「あ、ありがとサンジ。…悪いね、お客さんなのにお茶まで用意してもらっちゃって」
「いいさ、こういうのは職業病みたいなもんだしな」
軽く肩を竦めた彼は、「それより」との手皿に目を落とす。わずかだが、眉を潜めた。
「お前、少食すぎないか?」
言われて自分の皿を見下ろすが、そこに乗っているのはルフィたちの前にあるそれよりは若干小さめのオムレツと、サラダが取り分けられている。
先程バターロールを一つ食べたから、自分的にはそうでもないような気がする。
「そうかな? …あぁ、でも確かにあの人たちよりは少ないかもね」
『あの人たち』と、麦藁海賊団の野郎どもを視線で示すと、サンジはものすごく厭そうな顔で首を横に振る。
どうやら食糧争奪戦も佳境に入ったらしく、最後のチキンを挟んで三つ巴の骨肉争いになっている。感心しながら見ていると、疲れた声が呟いた。
「あいつらは基準にしない方が良い」
「うん、確かにね」
買出し、手伝ってもらってもいいかな。
遠い目で聞いたに、サンジはただ頷く。
両者の間にどこか生暖かい空気が流れたが、文字通り風船のように腹を膨らせた船長が、最後のチキンを一飲みした後、呑気に話題を蒸し返した。
「なぁ、。人魚姫って、ほんとに足が魚なのか?」
一瞬何を言い出したのかと、面食らったが、いつつ数える間にはその言葉を理解して、は黙って俯いた後。
「もち、普通の足だよ? 人魚姫って言うのは綽名みたいなもんで実際は只の人間だからね?」
顔を上げたはにっこりと笑顔だった。目が笑っていない状態を笑顔と表現していいものならば、確かに笑顔だったと言えるのだろう、その時のの表情は。
「ねぇ、ルフィ。悪いんだけど、あの爺がその『人魚姫』について何て言ったか、教えてくれない? 一字一句洩らさずに、全部」
言ったは笑顔であるにも関わらず、一億の賞金首に冷や汗をかかせるほどの迫力に満ちていた。
「え? と?」
周りに助けを求めるようにルフィは視線を泳がしたが、残るメンバーは沈黙し、視線をあらぬ方向に逃がしている。仕方無しに彼は自分を指差した。
「俺、何かおかしなこといったのか?」
だらだらと冷や汗をかきつつ、首を傾げる。
「うん? 別にルフィがってわけじゃないと思うよ? むしろ、あの爺の説明が足りなかったんだと思うし。君を責めてるわけじゃないから、早く教えてくれない? おかしな認識になっているなら訂正したいし、補足説明が必要かも判断できないから。ああ、説明するのは別にルフィじゃなくてもいいけどね」
言ってぐるりと、海賊たちを見渡す。
もし変なことを吹き込んでたら、容赦はしない。
顔が微笑んでいても、目がそう物語っている。
それが自分たちに向けられているのではないのは理解できているが、それでも自分たち越しに当の諸悪の根源に向けて殺気を放たれるのは、果てしなく心臓に悪い。
出会ってそれほど時は経っていないが、これだけは分かった。
今のに逆らうのは、得策ではない。
「あー、別に大したことは聞いてないな」
の傍らに居たサンジが、渋々といった態で口を開いた。
目で促せば、彼は言葉を選びつつ、つい先日行われた船内での怪談話、その後に続いた『人魚姫』の話を語る。
「だからな。つまり、俺たちがその『人魚姫』について爺さんから聞いたのは」
ウソップが話を締めくくるように、話をまとめた。
「一つが、そいつがめちゃくちゃ美人で」
彼がちらりと見れば、サンジがにゆるんだ顔を引き締めた。
「もう一つが、童話の人魚姫に例えられるくらいに唄が上手いこと」
言いながら、これがまず、まずかったんだろうなとウソップなどは心の隅で思う。常日頃から、我らが船長は音楽家を仲間にしたがっていた。
「それから、最後に」
そして何よりも一番、まずかったのは。
「その人魚姫が、異様なくらいに強いってことだ」
キラキラと目を輝かせる船長の横で、フォークを指揮棒のように振り上げながら、ウソップは呆れたようにそれを見つめている。
なるほどね、とは溜息をついた。
そんな半端な説明を受ければ、ルフィみたいに好奇心旺盛な人間をこの島におびき寄せるには十分だろう。それとは別に、興味を覚えた内容もあるにはあったのだが。
(しっかし、あの爺があの『船』の発見者だったなんて、世間も狭いなぁ)
ま、それはそれである。思考を切り替えて、は補足説明をすることにした。
「そうだね。美人かどうかは個人の判断に任せるけど、やたらと野郎に絡まれてるのはたしかだし。唄云々も一応、お金もらってやってる分、性根据えてやってるし。それに、この島の人間の大半はそこらのヘタな海賊よりは腕が立つから? 強いっていえば強いかな」
残念ながら、容赦なく今後の憂いを叩き潰すほどの訂正箇所は無かったから、酔いどれジジィ捕縛計画は次回に見送ることにして、はウソップの言葉に付け加えた。
「ただ、うちの人魚姫を君らの仲間にするって言うのは不可能だよ」
その言葉に嘘は無い。
真実彼らが『彼女』を仲間にすると言うのは、不可能なのだ。
「??? なんでだ?」
ルフィが首を傾げた。
「『海賊の仲間になるくらいなら、死んでやる』」
それがうちの人魚姫の口癖だからね。
呟いては苦笑する。
「仲間を探してるなら、他を探した方が良いと思うよ?」
「やだ」
即答だった。
「……ルフィ。だから、ほっぺた膨らませるのはやめようよ」
思わず脱力したが、船長殿の機嫌は直らなかった。
「そんなの直接聞いてみなきゃわかんないだろ? それに俺は絶対そいつを仲間にするって、決めたんだ。だからやだ」
「そりゃあ、そうかもしれないけど。しれないけど、ね? 君がやだって言ったからって、相手が納得するかどうかだって別でしょーが」
なんだかこういうやりとりは初めてでない気がする。
出会って一日もたっていないのに。
「やなもんはやだ。絶対俺は『人魚』を仲間にする!」
「………」
ちらりと傍らのコックに目を向ければ、こういう奴なんだと諦めたように横に首を振られ、船医はと言えば自分と仲間のどちらのフォローに回るべきかと顔を右往左往させている。
黒髪の歴史学者だけはどこか楽しそうに、船長の膨れっ面を見ているが、航海士と狙撃手は呆れ顔でこちらを見ており、剣士に到ってはどこか疲れたようにあさってを見やっていた。
どうも、こうなっては彼らにもこの青年を止める手立ては無いらしい。
ああ。だから、あの大時化の海を乗り越え、彼らが今ここにいるわけか。
ど阿呆の正体を突き止めたはいいが、本格的に頭痛がしてきた。
(どうしたもんかな)
が頭を抱えたその時、小屋の扉から何かが引掻くような音が聞こえた。
その音を耳に捉え、が小首を傾げ、玄関に向う。
後ろからサンジとチョッパーがついてくる気配と共に、視線が集うのを感じたが、構わずは扉を開けた。
空は見事な快晴。大時化は収まったようだ。
「やっぱり、ルルか。珍しいね、ここに来るなんて」
が開けた扉の向こうに居たのは、綺麗な毛並の黒い猫。
金色の目が、不機嫌そうにその足元ごしにチョッパーを睨んだ、ように感じたが、恐らく睨まれたのは麦藁の海賊団全員なのだろう。唯一、もろに視線が合ってしまったチョッパーだけがその事実に気付く。
「何だ? 猫?」
の背後で、上から覗き込むようにしていたサンジが不思議そうに呟いている。
(な、サンジは怖くないのか?)
先程から、嫌になるくらいに黒猫から怒気を感じているチョッパーは、思わず心の中で突っ込んだ。
突っ込んでから、気付く。
この黒猫はいっそ不思議なくらい、己の感情を押し殺している。
自分がそれに気付いたのは、この黒猫が自分に対しては…というよりも、獣である自分に対しては感情を隠していなかったからだ。
どういうわけかは知らないが、この猫は自分たちを快く思っていない。
「うん、うちの子。丁度いい、紹介するよ」
動物同士の心情など気付く様子もなく言っては、黒猫を抱き上げた。
テーブルを囲むようにしていた面々は、玄関先を覗き込んでいた姿勢のままにと黒猫にチョッパー、それからついでにサンジを出迎える。
の腕の中で、海賊たちの紹介を聞いていた猫はそれが終わると、トンとテーブルに着地した。
「でもって、このふてぶてしい黒猫はルル・パシス。ぼくの家族で妹みたいなもんだよ」
一体の台詞どれに反応したのか知らないが、ピクリと真っ黒な耳が動いた。に背を向けたまま物言いたげに髭が揺れる。
冷たい一瞥を何故かチョッパーに放って寄越してから、黒猫ルルは主を振り返り、一声低く鳴いた。
『んなことはどうでもいいけど、馬鹿どもが上がってきたわよ』
チョッパーには、そう言ったように聞こえた。
もしかしてその馬鹿とは自分たちのことだろうかとも一瞬思ったが、どうもニュアンスが違う気がする。
この猫は確かに自分たちを快くは思っていなかったが、それでもその目に軽蔑の色は浮んでいなかった。
けれど今、ルルが発した馬鹿という単語には、絶対零度の侮蔑の響きが込められていたように思う。
(どういうことだろ)
不思議に思うが、誰に問いただせば答えがわかるのか。できれば本人、否、本猫には話し掛けたくないのだが。
(に猫の言葉が理解できるわけはないだろうし)
感情が分かる程度ならば、長い時間共に過ごせば在り得るだろうが、一字一句理解しろと言うのは、努力が足りない云々の話のレベルではない。
思った矢先、チョッパーの考えを裏切るようにが盛大に眉を顰めた。
チョッパーが、からルルの言葉だけは聞き取れるということを知らされるのは、麦藁の海賊団がこの島を出ることになる前日のことである。
『わ…っと、ぼく用事が出来たから』
言ったはどこか慌てている一方、最初にルフィたちを助けに来たときよりも十数倍不機嫌な面持ちだった。それでも自分たちには悟られまいと努力しているようだったから、きっと本当はもっと不機嫌であったのかもしれない。
『まだ九時過ぎだし、小屋にある物は好きに使っていいから。食糧もあんまり残ってないけど食べちゃって構わないし』
でも昼には絶対役場に来てね。
それだけ言って、は走って行ってしまった。
村までの案内役にと彼が残していった黒猫は、めんどくさそうにオルガンの上で丸くなってあくびをしている。
本棚から適当に本を持ち出したロビンは、その猫から少し離れた場所で落着かない様子でその猫をちらちらと見ている船医の姿に、小首を傾げた。
「何をしているの、船医さん」
「えっ、や、あの……何も」
ロビンの言葉に反応したのか、黒猫がこちらを見た。
その視線にびくりと固まったチョッパーは、何か言いたそうにしたが、やがてすごすごとルフィたちの方へ戻っていった。
(へんな船医さん)
気に掛からなかったといえば嘘になるが、結局彼女はそのまま近くにあった寝台に腰掛て、古めかしい装丁の本を開いた。
本が語り始めたのは、今は亡きとある天才作曲家の人生。
奇しくもそれは、本棚の山のような量の本の中で、最もこの小屋の主が大切にしている本だった。
* * * *
こんなはずではなかった。
それが彼とその仲間たちの今、このときの心情だった。
この島に彼らが降り立ったのはほんの偶然。
たまたまこの海域を通りかかり、大時化に巻き込まれ命辛々この島に辿り着いた。
大波によって船の荷のほとんど、とりわけ食料を失った彼等が、略奪の計画を立てたのは、海賊たる彼らにとっては当然のことだった。
少なくとも、彼等はそういう海賊の在り方が当然のものであると信じて疑ったことは無く、またこんな田舎の島など彼等にとっては鴨にされて当然だと、そう思っていた。
警備隊だという人間たちが現れたときも、それは変わらず。
むしろ向うから鴨になりに来てくれたと、喜んだものだ。警備隊の隊長だと名乗ったのが、ほんの小僧であったこともその喜びを助長した。
だって誰が想像できただろう。
その小僧が、数十人からなる手だれの海賊をほぼ一人で叩き潰すなど。
「ああ、もう。ほんとバカばっかりで嫌になるね」
それが意識の暗転する前に彼等が聞いた、最後の声であった。
最後の馬鹿を叩きのめして、・は軽く白いTシャツを汚した砂埃を叩く。
その背後から恰幅のいい男たちの1人が声を掛けた。
「ご苦労さん、隊長。流石、仕事が速いね」
まったくだ、と他の3人が声を立てて笑った。
「俺らの出番全くなかったぜ」
茶化すような声音に、隊長殿は今ごろその事実に気付いたらしい。
「あぁ! しまった…ごめん。考えごとしてたから、つい」
勢いで全部倒してしまった、と申し訳なさそうな顔のはさらりと言う。
「いや、それは別に構わんのだけど」
「まあな、俺らはいいんだけど」
「ああ、俺らは全然な」
「むしろ楽できて嬉しいよ、俺らはな」
言いながら彼等は意味ありげに、地面に伸びた海賊どもを見やる。
いつものことだが、何と言うか。
「時々、俺はこいつらがめちゃくちゃ不憫なんじゃないかって、同情しそうになるよ」
戦闘下での海賊どもの心理が手にとるように理解できてしまったから、尚更だった。
「…奇遇だな。俺もだ」
「こいつらがしようとしてたことを思えば、そんな場合じゃないんだけどな」
ぼそぼそと彼等は呟き、すでに海賊たちを片端から縛り上げ始め隊長の後姿を遠い目で見つめた。
「そんな場合じゃないのは分かるんだが…でもあの姿格好で、あの強さって…」
「ある意味反則だよなぁ」
その上。
「本当に容赦がないからな…敵には」
縛り終わった海賊どもを、荷物か何かのように荷車にひょいひょいと積み上げていく小柄な背を見守りながら、彼等はしんみりと頷きあった。
* * *
「ああ、あんたたちが。大丈夫、話は聞いてるよ」
黒猫に連れてこられた砦のような門の前、詰め所から顔を出した警備員の男は、許可書を出したとたん、それまでの胡散臭そうな表情を微笑みに変えた。
「ようこそ、タツミヤ島へ」
ロウ・リードと名乗った青年に導かれ、海賊たちは門を潜る。
「話は聞いてるって…会ったのか、に?」
行き先すら告げていかなかったを思って、チョッパーは思わず尋ねた。トナカイが喋っていることよりも、彼は『』という言葉の方に驚いたように、足を止める。
「ああ、うん。会ったって言っても、俺はお前らが来ることくらいしか聞いてないけど。ま、役場の方にはちゃんと細かい指示が出てるんじゃないかな。…けど珍しい。隊長が、海賊に名前で呼ぶのを許すなんて」
また大時化が来るんじゃないだろうな。
本気で心配するように眉を潜めた彼の言葉が、ナミたちの琴線に引っかかる。
今、このひと何て言ったの。
「ちょっと待って。隊長、って?」
「あれ、聞いてない? ・は俺ら警備隊の隊長殿だよ」
軽い口調で、可愛く小首を傾げる姿は、一見優男にしか見えない容姿と相まって、とても警備隊の人間とは思えない。
それはにも同じ事が言えて。もしも今朝方の出来事が無ければ、絶対に警備隊の人間だなんて戯言は信じなかった。
それが何? 警備隊の隊長?
「マジかそれ!」
すげぇと顔に書いてルフィ。
だがもちろんそんな反応を示す人間は彼くらいのものである。いや、トナカイであれば似たような反応を示しているが。
「…嘘だろ?」
思わず呟いたウソップに、リードは真剣な顔で指先を揃えた掌を縦にして、扇ぐように左右に振った。
「うんにゃ、マジ」
因みに俺はその副官。言って彼は自分の顔を指差す。
…………。
「この島、大丈夫なのか?」
心底からのゾロの心配に、失敬なと青年は眉を跳ね上げた。
「俺は…まあ自慢できるほどじゃないけど、はめちゃくちゃ強いぞ!」
「けど、いくら強いからってあいつまだ子どもだろーが。そういう厄介で面倒なだけの役職は、大人がするべきもんじゃないのか?」
あの身長、あの声の高さ。どう見積もっても、は十四、五歳だろう。
「子ども? まー確かに若いのは認めるが、それでも隊長は二十歳だぜ?」
何を言い出すんだこいつらは。
そんな顔で言われて、麦藁の一味は珍しく全員揃って絶句した。
くしゅん!
「隊長、風邪か?」
「――どうだろ」
「気ぃつけなよ? ちょっと前から、とびきり厄介なお客が来てんだからさ。下手すりゃ、付け込まれるぜ」
「ああ、あの黒船の」
「あー、あの勘違い野郎か」
「…けど、実力だけは本物だ」
「ん、分かってるよ。大丈夫」
「でもだからって、あんま無理すんなよ」
「体調がおかしかったら、すぐに言うように」
絶対だからな。
そうしつこいくらいに念押す部下たちに、信用がないなとは苦笑した。
まあ、それも普段の自分の行いを振り返れば仕方の無いことだろうとは思うのだが。
「……了解」
言った、その後。
くしゅん!
鼻をこすって、若き警備隊長は独り語ちる。
「誰か噂でもしてるのかな?」
見上げた空は、いつものようにとても青かった。
【あとがき】H18.12.03
というわけで、オリキャラ満載でお送りしました。
海軍にティムさんとコーンバーズさん、で中間管理職なおひと(名前わすれた/最低だね)。
オーナルの爺さんは次ぎでてくるとしたらかなり先になると思うけど。
リードとルル、その他警備隊の面々はかなり出張ります。基本、名前が出てきたら次も出てくると覚悟してくださいな。
そして主要オリキャラはまだまだ出てくるんだなあ、これが(うわあ、収拾つくのかしらコレ)