十年前の自分ならならたぶん、というか絶対。
 こんな状況に陥ったら逃げ出していただろう。
 そう考えれば、自分はかなり成長したのだろうと妙に冷静な頭が他人事のように感心した。



 貴方に両手一杯の花束を 0



 綱吉の右手に控えるのは、青味がかった髪とオッドアイが特徴の、酷く整った造作を持つ青年。
 ダークグレーのスーツが厭味たらしく似合っている彼は、にこにこと笑みを絶やさない。

 片や左手の青年は黒髪釣り目のジャポネーゼ。やや仏頂面であるものの、こちらも女性の羨望を集めてやまない麗人である。
 羨むほどの白い肌に、黒い髪と瞳、漆黒のスーツがよく映える。

 パーティ会場の嫉妬に満ちた視線を自分が一心に受けている事実を考えると、これが世に言う「両手に花」という状況らしい。

(や、あれは女性に使う言葉だっけか)

 半ば現実逃避した思考で綱吉は思う。
 真実はどうであれ、大変迷惑な誤解であった。
 というかこの立ち位置、代わってもらえるなら代わって欲しい。
 だって先ほどからこの二人が発しているのはまごうことなき、互いに向けた【殺気】である。
 仏頂面の青年はもちろん、見た目笑顔の青年も水面下ではどす黒いオーラを発している。

(ああ、何で俺ってばよりにもよってこの二人護衛に選んじゃったんだろ!)

 呪うべきはボンゴレの血統。超直感。
 問題を起こすことは多いものの自分には忠実な右腕と、頼りになるものの妙にずれた発言の多い笑顔が爽やかな親友兼部下ではなく。
 よりにもよってソレは、「犬猿の仲」「ハブとマングース」と評されるこの二人を連れていけと、綱吉に囁いたのだ。
 自分の頭越しに牽制し合う二人を、己の身体的な発育の悪さを痛感させられつつ横目で見やった。
 互いに互いがいないかのように振舞いながら、ここまで殺気をぶつけ合える程度には、この二人はとても似通っている。
 それをこの場で口にしようものなら、この殺気が全て自分に向けられることは必至だったから、ため息を吐くにとどめたが。
 宴はすでに佳境。窓の外は夜の帳が落ち始めている。
 仕事を始める合図が先か、この二人の堪忍袋の尾が切れるのが先か。
 カクテルグラスを煽りつつ、綱吉はこんな厄介な仕事をボスの自分に押し付けた嘗ての家庭教師、今は腹心の部下である少年に心の中でこっそりと恨み言を吐き棄てた。

 (しかも、何で俺だけこんな格好!!)  

 訳わかんねーとの魂からの叫びに、頭の中の件の少年はニヒルに笑ってこう答えた。
 
 『こっちの方がいろいろと面白そうだったからに決まってるじゃねーか』













 【あとがき】H18.11.22(ブログより移動)
  いろいろとやってしまった感のある連載です。実はこれほんとは夢小説じゃなくてただの暗黒サンドだったんです。
  上みたいな綱吉独白形式で。
  けど。なあぜか、オリキャラ(ヒロイン)が出張ってきたのでいっそ夢にしてしまえ、と。
  題して綱吉争奪戦に参加しよう! …こんな小説、絶対需要ないよ(いいんだ、自分が楽しめれば/おい)



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